2023-01-01から1年間の記事一覧

「終わらない青」

虐待を描いた本作。女子高生楓は父親から日常的に暴力、性的虐待を受けている。ある日、楓は妊娠してしまい、父親からの暴力は加速していく。 徹底したリアリズムが特徴的だが、ところどころ象徴的なモチーフが用いられる。生命あるいは出産とも結びつく卵黄…

「子宮に沈める」

大阪二児遺棄事件を下敷きにしたノンフィクション映画。長女の幸と長男の蒼空の母親である由紀子は夫に別れを告げられ、一人で家庭を養うことになる。職歴のない由紀子は資格取得の勉強の傍ら、長時間のパート労働と保育園に預けることもできない二児の世話…

「極私的エロス 恋歌1974」と軽さ

原一男が自身の子を授かった末に沖縄へ飛び立った同棲人を沖縄へと追いかける私的なドキュメンタリー映画。冒頭に挟まれる「カメラで撮影する以外に彼女と繋がっている方法がなかった」という趣旨の台詞が男女関係の軽さと偶然さを象徴しているように思う。 …

「福田村事件」

千葉県福田村という大正時代のごくありふれた日常で起きた虐殺事件を描いた本作。作品前半の日常と終盤の虐殺シーンのコントラストは、事件が「福田村」にとどまらずどこでも起こりえたと思わせるリアリティがある。 関東大震災後がトリガーとなって、当時の…

はじめに

これから見た映画と芸術に関する評を書くことにします。というのも量を見るうちに、作品鑑賞がノルマ的になってしまって少し苦しくなってきたからです。量見たと言っても、ものの1年弱ですから大した蓄積はないのですが、純粋に作品を見るという根本態度に立…