「極私的エロス 恋歌1974」と軽さ

原一男が自身の子を授かった末に沖縄へ飛び立った同棲人を沖縄へと追いかける私的なドキュメンタリー映画。冒頭に挟まれる「カメラで撮影する以外に彼女と繋がっている方法がなかった」という趣旨の台詞が男女関係の軽さと偶然さを象徴しているように思う。

衝撃的な出産のシーン、思えば自分が出てきてから他人の出産というものを現物はおろか、映像ですら見たことはなかったのだから、どれだけ世界に対する想像力が足りていなかったか反省する。それも産んだ後に、「あぁこの子は混血か」とか、「最初は白っぽいけどそのうち混血っぽくなるよ」といい加減な物言いに聴こえながら、「殺すわけにはいかないでしょ、育てるよ」という責任のある言葉。

男女関係や人生に対する軽さ、形式に対する執着のなさと、その上で全てを自身の身体の上で受け止めるしなやかさの先に冒険的な世界が拓けているように思う。人生とは不確かなものであり、映画撮影という口実で辛うじて保たれる、いつかは離れ離れになる臍の緒のような関係性が美しい。