「終わらない青」

虐待を描いた本作。女子高生楓は父親から日常的に暴力、性的虐待を受けている。ある日、楓は妊娠してしまい、父親からの暴力は加速していく。

徹底したリアリズムが特徴的だが、ところどころ象徴的なモチーフが用いられる。生命あるいは出産とも結びつく卵黄のモチーフが最初に登場し、スプーンやフォークを執拗にティッシュペーパーで拭き取る父親の描写は映画内で2度繰り返される、(ファルスの具現化に見えてしまう)。妻は鬱病に陥り、性的不全を抱える父親の粘着的なコンプレックスを、その繰り返しのショットの中に見て取れる。卵とフォークなどの食器類の関係は、楓と父親の象徴的関係を表している。性虐待は本作の中核にあるテーマであり、最中いくつか挟み込まれる性行為のショットでは、それは一切加工されておらず、ピンク映画のような俯瞰的ショット、空間的な生々しさがある。そこにこの映画を単なる記録描写とするのではなく、一つの作品たらしめる要素があるように思う。「子宮に沈める」は床からの定点カメラが多かったが、こちらは天井からの視点が多い。また最後のトイレに子供を産み堕とすシーンなどは、昨年の「あのこと」と同様の痛々しさを感じさせられたし、後続の鉄道飛び込みを予感させるところなどは、分かりやすかった。私はこういった雨曝しの現実世界を全く知らないと気が付く。